vol.14 全国新酒鑑評会 (2)

梅錦山川 (株) 社長山川 浩一郎  全国新酒鑑評会は明治44年に始まり、現在まで毎年継続して開催されている由緒あるものです。しかし、元祖は全国品評会のほうで、明治40年に始まりほぼ一年おきに開かれておりましたが、昭和26年に中止されました。どちらも明治政府が殖産興業の一環として行った官営事業として大蔵省が主催しました。

 梅錦は昭和9年に全国第一位になっています。この時、現会長の山川由一郎は滝野川の国税庁醸造試験場で研修を受けていたそうです。研究室の山田正一室長から言われ、国元から出品酒を送ってもらいましたが、全部割れていてお酒は口にすることができなかったそうです。梅錦の第一位は篠田次郎著「日本の酒づくり」中公新著 (1981) に載っています。原典は山田正一「酒造」醗酵協会 (昭和24年) からの引用です。

「日本の酒づくり」の表を見ますと出品点数が書かれていて、新酒鑑評会より全国品評会の出品点数が多く、メジャーであったことが伺えます。親父から聞いていたことが本当だったのでちょっとがっかりしたのを覚えています。


全国品評会

第一位
出品数
明40
龍勢
(広島)
2136
42
諫 鼓
(京都)
2367
44
三角正宗
(岡山)
2294
大 2
金鵄正宗
(京都)
2801
4
山陽長
(広島)
3000
6
初賀里
(広島)
3013
8
酔 心
(広島)
3383
10
賀茂鶴
(広島)
4222
13
白牡丹
(広島)
4331
15
賀茂鶴
(広島)
4022
昭 3
森の井
(山口)
3962
5
瑞 鷹
(熊本)
3913
7
大野里
(秋田)
3936
9
太平山
(秋田)
5169
11
会州一
(福島)
4993
13
大 七
(福島)
4637
21
真澄正宗
(長野)
387
22
岩の井
(千葉)
244
23
誠 鏡
(広島)
-
24
真澄正宗
(長野)
386
25
誠 鏡
(広島)
-
26
旭菊水
(広島)
-
全国新酒鑑評会

第一位
出品数
明44
月桂冠
(京都)
27
45
飛鳥山
(東京)
24
大 2
月桂冠
(京都)
27
3
初 幣
(熊本)
40
4
日本盛
(兵庫)
34
6
まが玉
(長崎)
51
7
瑞 鷹
(熊本)
31
8
旭菊水
(広島)
37
10
酔 心
(広島)
46
11
笑満寿
(新潟)
45
12
千 福
(広島)
65
13
両 関
(秋田)
78
14
福美人
(広島)
101
15
賀茂鶴
(広島)
102
昭 2
大 関
(兵庫)
113
3
両 関
(秋田)
123
4
月桂冠
(京都)
127
5
白 梅
(島根)
143
6
月桂冠
(京都)
163
7
朝日山
(新潟)
152
8
朝日山
(新潟)
202
9
梅 錦
(愛媛)
203
 

第一位
出品数
昭10
五大洲
(広島)
294
11
会州一
(福島)
304
12
金 鳳
(島根)
246
13
朝日山
(新潟)
256
14
鳳 山
(宮城)
365
15
朝の松
(朝鮮)
140
16
新 政
(秋田)
216
17
新 政
(秋田)
315
18
真澄正宗
(長野)
307
19
一人娘
(茨城)
212
21
真澄正宗
(長野)
346
22
五 橋
(山口)
363
23
神楽盛
(岐阜)
442
24
四君子
(愛知)
546

山田 正一「酒造 (清酒篇) 」
醗酵協会 昭和24年7月


 この表は、秋山裕一・熊谷千恵子「吟醸酒のはなし」技法堂出版 (1987) にも載っています。こちらには昭和9年から10年分に1位のお酒の成分分析表が載っています。
昭和9年の梅錦の分析値はアルコール 16.3 日本酒度 -7.5 酸度 2.5です。


 鑑評会で良い結果を出すことがブランド評価を高めることになるため、鑑評会の価値は今より大きかったようです。そのため鑑評会で良い成績を取るための吟醸酒造りや出品の技術が研究されました。醸造試験所や鑑定官室の先生をはじめ、蔵元や杜氏などがそれぞれの立場で研究し、科学的、合理的な方法から民間療法のようなものまで色々あります。

 鑑評会で良い成績を取るためには酒質が‘きれい’な事が必要条件です。大正の末期に活性炭素が使われるようになり、次第に使用量が増え、ついには一升瓶の底をぬいた型のろ過器に炭素をいっぱいにし、お酒がぽとぽと落ちるほどのろ過をしたそうです。また、酸をイオン交換樹脂で抜いた時代もあり、酸度別審査の方法が取り入れられるきっかけになりました。さらには、もろみから蒸発する香りを低温で捕集した凝縮液を添加するヤコマンと呼ばれる方法も使われました。これらの技術は出品技術といわれ、邪道だと考えられる面もあります。

 一方、昭和の初めに導入された堅型精米機はお米の精米歩合を高くする結果になりましたが、日本酒の品質向上に大きな貢献をしたように思います。吟醸造りのノウハウは酒造好適米の山田錦で蓄積されています。全国新酒鑑評会の金賞をとるには山田錦を30%に精米することが必要条件だと言われています。優れた酵母が開発されたため、今は酸が出品規定の最低基準である1.0以上であるかどうかを心配し、出品酒に炭素は全く使用しなくなりました。ヤコマンも使わなくなりました。邪道だと言われ、科学分析でチェックされてきた項目が不要になることは、それだけ酒造りが進歩したと考えて良いと思います。

 酵母の新品種開発は細胞融合という技術が使われるようになった結果だと思います。この技術から生まれた酵母の代謝産物の量に規定がかかる時がくるかどうかは興味深いところです。これからも様々な技術が鑑評会で試されるのだと思います。これからの技術が美味しくてリーズナブルな市販酒造りに反映することができるよう、酒造りに励みたいと思います。

 当社は昭和40年以来、今回で24回目の金賞を受賞しました。毎年難しくなる金賞ですが、新製品開発の有力な研究の場としての吟醸酒造りに努力したいと思います。


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