vol.16 全国新酒鑑評会 (4) 〜出品酒造りの原料とその処理〜

梅錦山川 (株) 社長山川 浩一郎  鑑評会の出品酒は寒に入って造ります。お米の品種は一般に兵庫県産の山田錦が使われます。その理由は鑑評会用出品酒造りのノウハウが、山田錦で確立しているからですが、その年のお米の傾向や出品酒の品質設計などの情報が同じ基盤で交換できるという利点もあります。

 現在の吟醸造りは情報合戦だといっても言い過ぎではないほど、新しい知識を吸収していないと金賞をとるのが難しいのです。そのことは酵母競争を例にとり、全国鑑評会Uに書きました。昔の杜氏さんは出品酒造りのノウハウを秘密にしたのでしょうが、現代では情報合戦に勝つために自分の秘訣を教えてでも傾向を知ることが必要なのです。


 何故そんなに鑑評会の金賞に入るための傾向と対策が必要かということを推察してみますと、その理由は利き酒の方法に由来がありそうです。
 利き酒は一度に50点か100点のお酒を同型の容器 (利猪口) に入れ、ブランドなどの先入観を取り払って採点します。並べて利きますから評価は絶対評価ではなく、相対的な評価になります。

 出品酒は精米歩合30〜40%と高い精米ですから、お米の品種特製がはっきりします。 (山川の経験説です。まだ業界の定説にはなっていません。) 全国新酒鑑評会では山田錦で造ったお酒が並びますから、他品種のお米で造ったお酒は異質だと判断され、良い評価がされにくいのです。そのため、どうしても兵庫県産の山田錦で造ることになります。

 出品酒造りの初めは精米です。普通食べているお米は90〜92%、普通のお酒は70%です。しかし吟醸酒クラスのお酒では30〜40%まで精米するため、大変な技術が必要です。70%に精米するのには7時間ほどかかります。40%に精米するには3昼夜 (75時間) 、30%だと5昼夜 (110時間) くらいかかります。
 白米は仁丹くらいの大きさになってしまうのですから、砕けないように精米するための技術が必要です。お米を磨くロールの粘度やロールの温度を上げないようにロールの回転数、お米にかかる圧力などの管理が必要です。昼夜を分かたず精米をしますので大変な作業です。

 洗米では蒸米が水分を吸いすぎて柔らかくならないよう、限定吸水を行わせる作業もノウハウの一つです。精米歩合30%の山田錦麹米の場合で、浸漬後の吸水率は30%、蒸し上がりの水分は42%が標準です。

 蒸し方にも加圧蒸しが良いなどの説がありますが、当社では昔からの方法でやっています。甑を使い、常温の蒸気で1時間蒸します。甑から取り出した蒸し米は木の桶に取り、帆布の上にひっくり返してかき混ぜながら、予定の温度までさまします。

 酒母麹用、添麹・仲麹、留麹、酒母の掛米、添・仲・留の掛米、それぞれで少しずつ違いますが、酒母麹で42℃にします。時間は数分です。留の掛米は7℃にしますから数時間冷やします。時間をかけて冷やす間に水分をとばしたいという目的もあります。

 ここまでの一連の作業を原料処理と言います。


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