梅錦

梅錦の酒づくり

梅錦はこうして作られる

1精米

酒造りに適した米を使うことは言うまでもありませんが、玄米から雑味の原因であるたんぱく質や脂質を取り除く「精米」の技術もまた美味しい酒造りの重要な側面です。精米すると、お米の温度が上がり乾燥します。乾燥した状態のままでお米を水に浸すと、急激に水分を吸収してしまい、米が崩れてしまいます。これを防ぐために、精米を寝かせて水分量を調整するのです。これを「枯らし」といいます。胴われをしないように適度な水分量まで戻す。そのタイミングが難しいといわれています。

2洗米・浸漬

洗米は社内の井戸水で一定時間洗われます。目的は米に付着したヌカやゴミを取り除くことです。梅錦にて改良したシャワーによる洗米を行っています。その年の酒米の質などによって吸水性は異なります。最高の蒸米に仕上げるために適切な吸水歩合になるよう、洗米・浸漬時間の細かい調整が醸造責任者によって行われています。浸漬による吸水直後は、白米の外側に多くの水分が含まれています。水切り中に、その水分が白米の中心に向かって浸透していき、均一な水分を含んだ白米に仕上がります。

3蒸米

洗米・浸漬し終わった米を水切り後、梅錦独自の甑(こしき)に入れ、下部から蒸気を吹き上げて蒸します。独自の甑を使うことで蒸しの細かな調整が可能となります。良質の蒸し米は適度な固さと弾力のある手触り(外硬内軟)でサバケがいいといわれます。醸造責任者が少量の蒸し米を手に取り、手のひらの感覚や食感で蒸し具合を判断します。この後の仕上がりに大きく関わる工程で、醸造責任者の経験・技が生きる場面です。

4麹(こうじ)

梅錦では3つの麹室で、蒸し米に種麹を散布し、温度と湿度を調整し、麹菌の増殖を行います。完成した麹は醪(もろみ)の発酵過程で米のでんぷんを糖に変える役割があります。その糖を酵母が取り入れアルコール発酵します。麹の香りや麹菌の増殖の状態など、醸造責任者が微妙な変化に対応して麹作りが行われます。梅錦では一部の大吟醸酒に一升盛りの麹蓋を使用している他、機械による製麹を行っています。「一麹、二酛、三造り」という酒造りの言い伝えがありますが、麹造りは最も重要な工程といっても過言ではありません。

5酛(もと)

つぎに酵母の拡大培養を行います。これを酒母(しゅぼ)づくりといいます。水に麹と蒸し米を加えて次第に温度を上昇させ、乳酸の働きでpHを酸性にし、雑菌を抑えて酵母のみを純粋に培養します。当社では速醸酛(そくじょうもと)と高温糖化酛を使いわけています。
・速醸酛(そくじょうもと)…人工の乳酸を使った酒母のこと。約2週間程度かかります。
・高温糖化酛・・・高温で仕込み、速やかな糖化と雑菌の淘汰を行う。約1週間程度かかります。

6醪(もろみ)

大型タンク内で、酒母に麹米・蒸し米・水を加えて醸造を行います。このとき一度に全量を混合すると、酵母密度が下がり乳酸濃度が低くなって雑菌汚染のおそれがあるため、3段階に分けて次第に増殖させます。これを三段仕込みといいます。

7上槽〈搾り〉

上漕とは醪を酒粕と液体に分離する作業のこと。自動圧搾機で効率的に圧搾する方法の他に、伝統的な手法の「袋吊り」の方法もあります。醪を特製の布袋に入れて吊るし、自然の重力により落ちる雫を集めます。手間暇がかかる反面、雑味のない酒が得られます。上漕後、新酒を一定期間低温で放置し、白濁の原因となる滓(おり)を除き濾過処理します。

8火入れ

出来たばかりの日本酒〈生酒〉は「生き物」です。酵母菌や微生物がしっかりと生きているため、そのままおくと発酵が進みすぎ、味や香り、透明感を損なう原因となります。そのため、加熱殺菌して安定した熟成環境を作る工程が「火入れ」です。この火入れをすることで、酒質を安定させるだけでなく、防腐剤を一切使用することなく長期の保存が可能になるのです。これはまさに江戸時代より続く先人の知恵と言えるでしょう。
ただし、中にはろ過や火入れをせずに生酒のまま低温貯蔵するタイプの日本酒もあります。火入れをしない生酒はデリケートで流通・保存が難しく、商品としても数量が限定されますが、新酒特有の華やかな香りとフレッシュな味わいが人気です。

9貯蔵

火入れの済んだ日本酒は、タンクで貯蔵します。一定の冷却温度を保ち厳密に数ヶ月~1年ほど貯蔵され、ゆっくりと熟成を重ねていきます。タンクで貯蔵する場合、瓶に入れて貯蔵する場合など、さまざまなケースがありますが、温度が高くなると熟成が進みすぎてしまうため、酒質に合わせた適切な温度管理が必要となります。 日本酒は瓶詰されるまでにタンクの中で貯蔵されるうちに、この新酒の持つフレッシュな荒々しさが落ち着き、香味が丸くまろやかな酒質になっていくのです。

10調合

日本酒は、銘柄ごとの酒質にするために味見し、色・香味・味わいを調製します。
瓶詰め前に仕込み水を加えて原酒の強さを和らげ、アルコール度数を規格に合わせます。
調合・濾過・加水と作業を行い、それぞれの銘柄が目指す酒質に、製品としてブレのない安定した味わいに仕上げていきます。
「原酒」と表記された日本酒では一切仕込み水を加えていないため、アルコール度数が18%以上となり、濃厚で芳醇な風味を持つ日本酒となります。

11詰口

詰口作業は、瓶詰めの他、紙パック、少容量カップへの日本酒の充填作業をさします。
詰口の各工程を連続して繋ぎ、瓶詰を行うのが自動瓶詰機です。能力は最大1.8L 6,000本/時間で行われます。充填の工程を手作業で行う場合を手詰めと称し、瓶型が特殊な場合や瓶詰本数が少ない場合に行います。
瓶詰された製品は、入味、ひびわれ、ごみなどを検査します。これを検瓶と称し、目視による全数検査が行われています。その後、商品ラベルを貼り付けます。

  • こだわり抜いた原料米

    日本酒の主原料は「米」。味わいを左右するのは使っている米といっても過言ではないほど、米は重要な要素です。酒造好適米には様々な品種がありますが、大粒で脂質やたんぱく質が少なく吸水しやすいものが最適とされています。梅錦が使うのは特に上等とされている有名品種「山田錦」「白鶴錦」「雄町」など10種類以上の酒米を使い分け、単独で、あるいはブレンドしながら多彩な日本酒を造り分けています。同じ品種でも産地の気候によって特徴が違い、酒の造り方も味わいも変わってきます。様々な酒米を「使いこなす」高い知見と技術が蓄積されているのです。

  • 石鎚山系から潤沢に流れ出る地下水

    西日本最高峰・石鎚山を中心とした石鎚山系。その麓に位置する梅錦の酒蔵では、洗米・蒸し米の工程等でこの大きな頂から生まれる伏流水を使っています。
    石鎚山系の伏流水は、浸透区域から自噴地域までの距離が短く、地下にある時間が短いために水の味を悪くする成分が溶け込みにくく、癖のない軟水となっています。カルシウムやマグネシウムが少ないまろやかな甘味が感じられる美味しい水は、まさにこの地域の自然と地形が育んだ奇跡の味。蔵では敷地内にある井戸から汲み上げ使用しますが、この伏流水は止まることを知らず淀みなく湧き出ています。燧灘(ひうちなだ)で獲れる海の幸に最適な日本酒が梅錦で生まれたのは、石鎚山系の恵みがもたらした必然といえるでしょう。

  • 人間の感性を十分に生かすための
    「酒づくりの道具化」

    1987年以降、原料処理工場を皮切りに全ての施設の近代化を進めてきました。
    たとえば、蒸米をスコップで掘り起こす作業。約700キロの蒸し器をひっくりかえすのに、フォークリフトを使えば、その分人間の労力を別の作業に注ぎ込むことができます。
    味の決定権を持つ醸造責任者が、その仕事に集中できる環境をつくることは、酒の品質を高く維持し続けることに直結します。醸造責任者が目で見て触って温度や感触を見、鼻で嗅ぎ、口で噛んで確かめるなど、経験・五感を使った丁寧な手仕事によって梅錦の日本酒は生み出されています。
    その想いは昭和の名杜氏、山根 福平(現代の名工)とその師である阿瀬 鷹治が梅錦の酒造りを確立して以来、脈々と現在にまで受け継がれています。

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